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第4話 疑いの目②

last update Date de publication: 2025-05-24 16:42:30

 夕食のあとのティータイムで、またさくらの能力が発動した。

 今度は誠一が紅茶を飲もうとして、怒っている姿が脳裏に浮かぶ。

 それしか情報はない、いったい彼は何に怒っていたのだろう。

 さくらはこれから誠一に出すために用意されていた紅茶の葉を確認した。

 すると、いつも誠一に出している葉ではないことに気がつく。

 さくらは急いでキッチンに戻り、誠一用の紅茶の葉の缶を手に取ると食堂へと走った。

 食堂へ戻ると、ちょうどメイドが紅茶をカップに注いでいるところだった。

「まって、これに変えて」

 さくらがそのメイドに耳打ちすると、彼女はあからさまに嫌な顔をした。

 新しく入ったばかりのメイドで、まだ一人一人の好みを把握できていないようだ。

 自分が間違っていることもわかっていないのだろう。仕事に横やりを入れてくるさくらを不機嫌そうな表情で見つめてくる。

 さくらが困っていると、旭がポットを持つ彼女の手にそっと触れた。

「君は下がっていいよ、あとは僕がやります」

 旭に見つめられたメイドは頬をほんのり染め、素直に頷いた。

 さくらから缶を取ると、旭は紅茶を入れ直す。

 その手際の良さに思わず見とれているさくらだったが、我に返りお礼を言う。

「ありがとうございます」

「いいえ」

 紅茶を三人へ配っていく旭。

 その身のこなしは洗練されていて無駄な動きがない。

 本当に、旭はすごい。

 彼の言動すべてが執事として完璧だった。

 主人を立て影となり、決して目立たず、しかし確実に忠実に物事を成し遂げていく。

 もちろん、黒崎家を支える以外に使用人たちのサポートも忘れず、屋敷全体のことも考えている。

 彼から学ぶべきことはたくさんある、メイドとして旭はさくらの目標だった。

 さくらが旭を目で追っていると、フォークが地面に落ちる音がした。

「すみません、フォークを落としました……。さくら、新しい物持ってきてくれる?」

 珍しく聖が指名してきたので、さくらは驚いた。

 彼は普段みんなの前で誰かを指名するようなことはしない。

 しかし、さくらは嬉しかった。

 どんなきっかけであれ、聖の側でお役に立てる。それがさくらの至福の時なのだ。

 フォークを持っていくと、聖の受け取る手がさくらに触れた。

 さくらはビクッと反応してしまう。

「ありがとう、さくら」

 聖は極上の微笑みをさくらのためだけに見せる。

 幸せで満たされ、さくらの顔はみるみる真っ赤に染まっていった。

 そんなさくらの様子を、誠一は意味深にじっと睨みつけていた。

 先ほど、さくらが紅茶の缶を変えていたのを誠一は見逃していなかった。

 あいつ、さっきなぜ紅茶を変えた?

 俺の紅茶だ、飲んでみたがいつも通りの紅茶だった。ということは、先に入れていたものは違う紅茶だったということになる。

 しかし、よほど注意していなければ紅茶の葉が違っていることなんてわからないだろう。

 どうも、あいつには何かある気がする。

 まるでこれから起こることがわかっているかのような……。

 探ってみるか。

 誠一の視線にまったく気づかないさくらを尻目に、旭は誠一の視線の先にさくらの存在があることに気づいていた。

 その視線が好意的でないことが気になった旭は、誠一に注意を払い監視していた。

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